書評:人工知能は資本主義を終焉させるか(齊藤元章、井上智洋)

書評

スパコン開発者と経済学者の対談本

作者の一人、齊藤さんは医学博士にしてスパコン・人工知能開発者、起業家

もう一人の井上さんはIT企業に勤務した経験がある、経済学者の方です。

この二人の対談形式で話が進みます。

時代を代表する知者二人が対話を通じて議論を深めていく内容は、一読の価値ありです。

 

補足:ちょうど昨日ですが、齊藤さんが逮捕されてしまいました。
テレビでもニュースが流れていました。

スパコン開発社長ら逮捕=助成金4億円詐取容疑-「PEZY」社・東京地検

経済産業省が所管する法人から助成金約4億3000万円をだまし取ったとして、東京地検特捜部は5日、詐欺容疑で、スーパーコンピューターの開発を行うベンチャー企業の社長斉藤元章容疑者(49)=東京都千代田区=ら2人を逮捕した。

助成金の詐欺容疑との事ですが、本書の内容の信憑性には無関係です。
日経ビジネスの「日本イノベーター大賞」受賞の方ですし、不起訴で帰っていらっしゃる事を願うばかりです。

経済・社会の観点から「シンギュラリティ・ポイント」を議論

「シンギュラリティ・ポイント(特異点)」とは、本書の説明を借りると「人類の知性を超越する非生命的な知性」が出現し、その知性が人類の上に立つことで、想像を絶するような社会の大変革が起こる時点の事です。

一説には、2045年にこのシンギュラリティ・ポイントが、2030年にはその前段階である「プレ・シンギュラリティ」が到来するとされています。
余談:「特異点」はもともと物理学の用語で、重力が無限大になってしまう等、法則の中でパラメータが特異性を示すもの。例えばビックバン理論における「始まりの特異点」等は浪漫にあふれていると言わざるを得ない。

本書では経済・社会の観点から、シンギュラリティ・ポイントを議論しています。

第1章は「経済的特異点」について

本当にざっくり要約させて頂くと、

・2030年頃に汎用人工知能が登場し、第4次産業革命が起こる

・その時、ほっとくとトマ・ピケティの言う「R>G」は益々拡大する

・その対応策として、「ヘリコプターマネー」をベースにしたベーシックインカムがある

・お金の高機能化(ブロックチェーン)によって、よりフェアな経済運営ができる。

と言ったところでしょうか。

私も完全に同意見なのは、ほっとくと「R>G」がますます拡大しちゃうので、ベーシックインカムみたいな政策を実現する方が良いんじゃないかなってところです。

(エントリー:AIが拡大させる「r>g」 も読んでくれると嬉しいです)

「ヘリコプターマネー」について説明すると長くなるので本で読んで頂きたいです(^^;
「Cレジーム」という興味深いアプローチも出てくるので、是非!

あと、お金の高機能化でよりフェアな経済運営ができるってのは「なるほど~」と思いました。スマートコントラクトを使えば実現できそうですね。頑張れイーサリアム(笑)

(エントリー:仮想通貨のメリットを理解するのが2か月遅かった件も読んでくれると略)

個人的には、とても賛同・同意できるところが多かった印象です。

第2章はさらにぶっ飛んでる

第2章 「社会的特異点」がもたらす人類の未来 は、ますます奮ってます!

曰く、

・エネルギーのフリー化(タダになる)から社会の大変革が始まる

・衣食住もフリーで手に入る時代になる

・そして人類はお金と労働から解放される

・人類が「不老」を手に入れるのも時間の問題

うーん!早くそうなって欲しい…!と読んでいたところ、齊藤さんは断言します。

生命科学の進化の極致である不老ですが、これは10年以内にほぼ確実に実現できます。

10年以内は流石に早くね!?

いやそうなって欲しいけど(^^;

そして齊藤さんの論は「ブレイン・マシン・インターフェース」の進歩によって、人類は孤独から解放され、個から全体に目覚める」と展開されていく…

おお!これ「人類補完計画」じゃないですかって思いながら読んでいたら、

井上さんにそのまんま突っ込まれていました(笑)

齊藤さんの話は、バナールやバナールに影響を受けたSF作家アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』、さらにそれに影響を受けたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を彷彿とさせます。人は皆、傷つけ合うから魂を1つにしてしまおうというのが『新世紀エヴァンゲリオン』の「人類補完計画」でした。

うん、オタクな私としてはとても面白かった!

あと、「VRで飲み会が出来れば都市部にすむ必要ないよね」みたいな井上さんの視点も面白くて素敵でした。

一般的に、未来って見えないようでいて、すでに予兆はあるんですよね。

「ああ、なるほど。これはそういう事の予兆なのかも知れない」って考えさせられる内容が、二人の議論の中にたくさんありました。

例えば「若者の意識の変化の方が、シンギュラリティより先に起こっている」という説明が本書の中にあるのですが、確かにそうかも知れない… 労働の意味は、すでに変わり始めているのではないかと思います。

こういう「気づき」を与えてくれる本は本当に面白いです。

いつかは分からないけど、こういう世界に必ずなると思う

ところどころ、私のブログのエントリーを差し込ませていただきましたが、普段考えている事や予想している事が非常に近いので、ものすごくすんなり読めました(笑)

この本に書かれているような時代は、それこそ

「時間の問題」で、いつか必ず訪れる。

私はそう思います。

シンギュラリティの考え方は、子供の頃、藤子・F・不二夫の短編SFマンガで読んだ事があるんですよね。…題名わすれちゃったんですけど(笑)

マンガでは次のようなニュアンスが語られていました。
「文明の進歩のスピードは、どんどん速くなっている。このままの調子でいくと、進歩に要する時間はゼロになり、進歩の速度は無限大に近づく。その時に、何が起きると思う?」
…細かいセリフは忘れちゃったんですけど(笑)

この本にも、そのニュアンスが書かれています。

いずれどこかの時点で変化に要する時間がゼロに近づき、ほとんど一瞬のうちに産業革命並みの巨大な変化が立て続けに起きるようになるかもしれない。これこそが、もともとの物理学の用語としての「特異点」に近い現象です。

特異点の先にあるのは「新たなステージへの到達」なのか?
それとも「進化の究極としての死(破滅)」なのか?

思ったより早く、分かるかもしれませんね。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

 

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