何かをやって、失敗するのは怖い~不作為バイアス

心理学・行動経済学

副作用のあるワクチンの話

とある病気がある。
その病気で、年間1万人の内10人が命を落としている。
その病気にはワクチンがある。
ワクチンを打てば、少なくとも一年間その病気に感染する事はない。
しかし、そのワクチンにはまれに重篤な副作用を引き起こす可能性があり、
1万人に3人が命を落としている。
さて、あなたはこのワクチンを打ちますか?

これは確率論で考えれば、ワクチンを打った方が死の可能性は少ないです。
しかし、一般的には上記質問には「打たない」と回答する人の方が多いです。

この理由は、自分の作為(行動したこと)が、マイナスの結果になる事を必要以上に嫌う心理(不作為バイアス)が働いているからです。

他の例では、「身に覚えがあるけどAIDSの検査を受けるのが怖い」というのも不作為バイアスの一つです。冷静に考えれば、例え感染していたとしても、検査をして明確にした方が治療を受けられますし、存命期間がぐんと増えます。感染していなければ余計な不安を消すことができます。良い事づくめなんですが、「検査が怖いので受けない」という判断をする人もいます。

スポーツの審判も例にあがります。

例えば、サッカーのペナルティエリアの中では審判のファウルに対する判断が甘くなる、という調査結果も知られています。
自分の判断の結果、決定的なPKを与えてしまう事を恐れてしまうからだと言われています。

株式投資でいうと

A:X社の株を持っていて、売った直後に株価が100万円あがった
B:X社の株を買おうとしていたがうっかり忘れていて、株価が100万円あがった

これはどっちも100万円儲けそこなったのは同じですが、Aの方が数倍悔しいです(笑)
(これを避けようとする気持ちは、手持ちの株を過大評価してしまう「保有効果」とも関連があります)

人間であれば自然な事かもしれませんが、たいていの人は「何か行動を起こして悪い結果を導くよりは、何もしないの(不作為)が一番!」という性向を持っています。
やらない理由を作り出して何もしない、というのは自然な発想とも言えます。

さらに、この不作為バイアスは、損失回避バイアスと共に、変化を恐れる「現状維持バイアス」を構成します。

残念ながら私たちの思考は、現状維持・前例踏襲こそが至高、という考え方に陥りやすいようなクセを持っているのです。

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