老衰していく日本においては、「若者優先」くらいが丁度良い

政治経済

振り込め詐欺犯の言い分

「盗人にも三分の理」という言葉がある。Even thieves have their reasons.

その「理」に賛同できるかどうかは全く別の問題として、それが一部でまかり通る現状は直視しなければならない。

「格差社会でしょう。年寄りは裕福、若者は貧乏。俺らは年金すらもらえない。ともなれば、溜め込んでる金持ちからいくらか取ったところで何が悪いのかと。死に金を俺らが活かす、貧乏人に再分配する。現代版の”ネズミ小僧”だと本気で信じている連中もいて、月に100万稼ぐのに、実家に70万仕送りしているやつもいました。中には有名大卒の経歴を持つ手下もいた。こっちが刷り込まなくても、すでに弱者意識を持っている若者ですよね」

高齢者をターゲットにしたリフォーム詐欺も流行っているが、その犯人が言い放った次の言葉。

筆者が取材したことのある「リフォーム詐欺」を行っていた男性が、5年ほど前に言い放った言葉を思い出す。

「正直、老人から金を取っても心が痛まない。俺たちには未来がある。日本の未来だって、若者にかかっている。老人は生きれば生きるほど金がかかる。その金を払っているのは若者だ。あとは死ぬだけ、という老人たちに金は必要ない」

彼らには、お年寄りを騙して金をせしめる事への罪悪感が無いように思える。

その背景には、世代間格差がある。

世代間格差が不寛容な世代間対立を産む

日本にある資産の70%近くは、60歳以上が握っている。

一方で、急速な少子高齢化によって、現役世代の負担はどんどん大きくなっている。

年金や社会保障。

若い世代は、年金として多くの負担を強いられながら、自分が老人になった時には、払った分すら貰えるかどうか分からない。

むろん、高齢者の全部が裕福であるわけではなく、「下流老人」「漂流老人」と呼ばれる貧困層も存在する。

生活保護世帯の約半分は高齢者世帯であり、低年金・無年金だったりする事実は、現役世代をいらだたせるかもしれない。

「嫌老社会」化を感じる事はないだろうか。

コンビニで理不尽にキレる老人や高速道路を逆走する老人のニュースがあると、ネットで随分なヘイトが繰り返される。

高齢者世代にも言い分はある。

そもそも高齢者全員が得をしているわけではないし、富裕層の年金減額や医療費負担の増額に賛成している高齢者も少なからずいる。

なによりも、人は皆、老いねばならない。老人は、私たちの未来の姿である。

私だって、いつかアクセルとブレーキを踏み間違えるかもしれない。

若者の就職環境は依然厳しい

全体的な失業率が低下し、戦後最大の景気拡大とまで言われる現在においても、若者の就職環境はそれほど好転しているわけではない。

2018年6月の時点で、20代前半の失業率は4.7%。

決して高い数値ではないが、全年齢で見れば2.8%まで失業率は下がっているのに比べれば、若者の失業率は高いと言える。

給料も上がりにくい。

高度経済成長期から安定・停滞期に入り、右肩上がりの給料が望めないところへ、国境を越えた労働の移動(オフショア化)が追い打ちをかける。

企業の側にしてみれば、一度上げたベテランの給料を下げるのは非常に難しいので、昇給は抑えざるを得ない。

給料も上がりにくく、社会保障の負担は大きい。上のポストは詰まっている。
若者は、オジサンオバサン達の想像以上に厳しいのである。

ちなみに、マタスーは1976年生まれのオジサンである。子供もいないので「サステナブルな社会」への渇望はそれほどでもない。このまま行けば、私の老後の年金は見ず知らずの若者たちに払って貰えるので僥倖である。

 

サステナブルな社会のために若者の優遇を

若者たちが生産性の高い仕事につけなければ、職業訓練の機会を損なう事になる。

若者たちにこそ責任とクリエイティビティのある仕事を任せ、社会全体の生産性を高めて行かなければ、日本は今の「比較的金持ち国家」のポジションを失う事になろう。

これは高齢者の社会保障と相反する(年金の受給が遅くなることから、定年退職者の再雇用が求められている)のが難しいところだが、シニアパワーには技能の継承など「ポストや処遇ではなくて誇りで報いる」等、工夫の余地はあるだろう。

社会保障の多くを占める医療費についても、メスを入れる必要がある。

「○○の奥さん、今日は病院に来ていないのね。体調でも悪いのかしら」
こんなブラックジョークが生まれないように、医療費の適正な使用にも舵を切る必要がある。

そして、治る見込みの少ない高齢者の延命治療は行わないなど、ある程度ドライな線引きを行う事も、残念ながら必要になってくるだろう。

税金の使い道を、高齢期から青年期~壮年期にシフトさせることは、Quality of Life の向上に繋がる。

そしてこれを行うためには政治の力が必要だが、もはや高齢者の方が政治的なパワーが強い(人数が多い)ので、地道な説明と説得とで動かしていく必要がある。

諦めたらそこで試合終了ですよ?

なんでこんなことを書いているかというと

嫌老社会が深刻化して、世代間対立の暴力沙汰になったりするとイヤだな~
なんて思ったからです。

時代背景が変わっているんだから、相互理解を進める努力は必要ですわね。

Easy oar.

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