フォートナイトという、大人気のゲームがあります。
その人気たるや、
「ウチの子、1日中フォートナイトをやっているわ~」とか
「ずっとフォートナイトのゲーム実況動画を見ている。何が楽しいんだか…」
という、フォートナイトにハマった小中高生をお持ちの親御さんの嘆息が漏れ聞こえてくる程です。
さて、このフォートナイトですが、スマホ業界の支配者であるAppleとGoogleに同時に喧嘩を売るという快挙を成し遂げ、8/14現在、i-PhoneからもAndroidからも村八分にされています。
後世の歴史家は指摘するでしょう。
ゲーム業界のちょっとした話題としか思えないこのニュースが、米中プラットフォーム戦争の到来を告げるギャラルホルンであったと…!
騒動の経緯
発端は「プラットフォーム税」
一般に、ユーザーがアプリを購入する場合、i-PhoneならApp Store、AndroidならばGoogle Playから購入するのが普通ですが、この時、プラットフォーマーであるAppleやGoogleに、アプリ代金の30%が手数料として差し引かれます。
つまり、ユーザーが1000円のアプリをApp Storeで買うと、300円がAppleに、残りの700円がアプリメーカーに入るという事になります。
フォートナイトも同様で、売り上げの30%をAppleやGoogleに差し引かれます。
フォートナイトのメーカーであるEpic Games(エピックゲームズ)は、常々「30%は高い!ボリすぎじゃろがい!」と言っていました。(もちろん英語で)
格安の直接取引をした事でApp Storeから消される
Epic Gamesは、フォートナイトのゲーム内でApp Storeを介さない独自の課金システム“EPIC ダイレクトペイメント”を実装しました。
このシステムでApp Storeより安い割引価格で商売を始めたものですから、Appleから「お前何してくれちゃってんの規約違反な!」という事で、ガイドライン違反を理由としてApp Storeからフォートナイトが削除されます(2020/8/14)
Epic Gamesの反撃が早い。早すぎる…!
Appleの対応を受けて、Epic Gamesは即座にAppleを相手取った訴状を公表!カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴!
さらには、ゲームユーザーを巻き込んだ世論戦の展開を開始します。
Youtubeやゲーム内でAppleの有名なCMを皮肉った動画を公開しました。
Epic GamesはApp Storeの独占に異議を唱えました。報復として、Appleは10億のデバイスでFortniteをブロックしています。https://t.co/VwLAHlzLap へアクセスし、2020年を「1984」にしないための闘いに参加してください。 pic.twitter.com/LSKyXiXQVA
— フォートナイト (@FortniteJP) August 13, 2020
この「1984」というのは、まだAppleがチャレンジャーであったころ、当時圧倒的な支配者であったIBMへの挑戦をテーマにしたイメージCMです。
さらに、Epic Gamesはtwitterのタグで ”#FREEFORTNITE” の使用を呼びかける等、ユーザーを巻き込んだ世論形成で、Appleなどに揺さぶりをかけています。
この対応の素早さ…
そう、Epic GamesはApp StoreやGoogle Playから削除されるという事を見越したうえで、満を持して仕掛けたという見方が自然です。
もっとも、AppleやGoogleの圧倒的な優位がこれで揺らぐとは思いませんが… 多分次の手があるのでしょう。
米中プラットフォーム戦争、開幕!?
喧嘩を売る理由を考えてみよう
確かに、30%のプラットフォーム税を半分の15%にできたら、その分の売り上げは丸々利益になるので非常に美味しいお話ですが、他のアプリベンダーが続々とこの戦いに参加するかと言うと… どうなんでしょう。少なくとも儲かっている企業はわざわざ参戦しないでしょう。
実際問題、普通の企業ではAppleやGoogleのような、確立されたプラットフォーマーに喧嘩を売るメリットはそれほどない…というかリスクとデメリットの方が多すぎます。
そのプラットフォーマーになり替わろうとするなら話は別ですが。
プラットフォーマーは美味しい商売
プラットフォーマーは美味しい商売です。なんたって他社の作ったコンテンツが充実すればするほど税金(手数料)が取れるわけですから。
そんで、今のスマホゲームの税金はAppleとGoogleという米国企業に収められるわけですが、これは昔からそうだったわけではなく、未来永劫そうだとも言えないわけです。
実際、Epic Gamesも、独自のPCゲームのプラットフォーム「Epic Gamesストア」を持っています。
公正に配慮するために記載しますが、「Epic Gamesストア」の利益配分は “88対12”(Epic Gamesの取り分が12%)となっており、競業のPCゲームストア「Steam」が30%の手数料を取る事を考えると、かなりゲームベンダーに有利な設定となっています。
Epic Gamesの背後に中国企業の影
Epic Gamesの筆頭株主は、創設者兼CEO兼ゲームプログラマ、ティム・スウィーニーですが、その次に中国企業のテンセントが40%の株を所有しています。
このテンセント、ゲーム業界ではかなりの存在感を持つ企業でして、特にe-sports業界では名をはせています。
wikipediaから引用すると
世界最大のPCゲーム「League of Legends」を運営する米ライアットゲームズ社、ギネスワールドレコーズから「最も成功したゲームエンジン」と認められたUnreal Engineで知られる米Epic Games社、世界1位のモバイルゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」を運営するスーパーセルの親会社でもあり、また、韓国最大のモバイルチャットアプリ「カカオトーク」を提供する韓国企業カカオ、および韓国最大のモバイルゲーム企業であるネットマーブル(CJグループ)の大株主でもある
これは強い!
私の好きだった「クラッシュロワイヤル」もテンセント傘下になってしまいましたとも、ええ。
米国に本社にあるゲームの会社だけど、気がつけば100%中国資本なんて実例もあり、もはやテンセントの資本力がなければe-sportsは成り立たない、そんな影響力を持っている大企業なのです。
米中の動きの兆候になりましょう
米中プラットフォーム戦争、最初の戦場はゲーム業界になるかもしれませんね!
「金盾」に守られた中国のネットワーク社会は世界から独立しており、中国以外の企業は中国で商売する事はできませんが、中国のIT企業は世界で商売を行う事ができるという、不均衡があります。
米国としてはこの不均衡を是正すると共に、中国共産党による情報の不正利用を阻止したいところ。
Tik Tokがアメリカで使用禁止になる動きもありますし、ITを巡るテクノ地政学は今後ますます重要になりましょう。
ゲーム好きとしても、経済ニュース好きとしてもオラワクワクすっぞ!な金曜日でした。
Easy oar.
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