2020年の11月、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨の価格は、大きく上がったり下がったりした。
ソース:コインチェックホームページ https://coincheck.com/ja/exchange
もっとも、仮想通貨にとってこの程度の暴騰暴落は平常運転に過ぎない、のであるが。
私は10イーサリアムと0.1ビットコインを所有していて、特に買い足す気持ちも売る気持ちもない。
恐らくは、2025年までは保有し続ける(一部では『ガチホールド』と呼ばれる)と思う。
(値段が今の100倍になったらその限りではない)
現状、仮想通貨をリアルの通貨として、つまり「価値交換の手段」として使える場所は限られているが、今後は徐々に普通のお店やネットショッピングでも使えるようになってくるだろう。
そうなれば、ますます仮想通貨市場への参加者は多くなる。
メトカーフの法則によれば、ネットワークの価値は、それに接続する端末や利用者の数の2乗に比例する。通貨網はネットワークの一種としてとらえる事ができるので、参加者の増加は通貨網の価値、ひいては通貨自体の価値に対して、2乗で効いてくると言っても過言ではない。
一方で、単に「普通にお店で使える」だけでは、国家が発行する一般の貨幣や、あるいは企業が付与する各種のポイント(※1)の競争相手になるだけで、使用者の立場から見ると本質的な違いはない。(※2)
ブロックチェーンを活用した、仮想通貨ならではの用途があるとしたら、さらにその未来は明るい。
ブロックチェーンのビジネス応用事例としては、商品流通のトレーサビリティ(追跡・本物である事の保証)や、アフィリエイト型クーポン(使われた場合だけオファーに宣伝料が入る)の発行などがあげられる。
これらの中で、私が個人的に最も期待しているのが「デジタルコンテンツの流通追跡およびその収益分配」である。
初音ミクに見た、デジタル分業とプロシューマー化
ここで、話は唐突にボーカロイド動画の説明に入る。
ボーカロイドとは、初音ミクとか鏡音リンといった、電子の歌姫。言ってしまえば人間の歌声を真似たシンセサイザーである。
今では少し旬を過ぎてしまった感はある(ファンの人はどうか怒らないで欲しい)が、このボーカロイドが活況の頃は、カドカワが運営する「ニコニコ動画」に毎日数多くの新作がアップロードされていた。カドカワの株主の一人としてお礼を言いたいありがとう!
そして、その動画は多くの場合、分業によって創られていた。例えば、歌詞を書く人、曲を作る人、曲に合わせたイメージイラストを描く人、イラストをもとに動画を作る人、などである。(※3)
さらに派生して、その曲を人間が歌ったいわゆる「歌ってみた動画」においては、歌を歌う人(歌い手と呼ばれる)、音声を楽曲にミキシングする人、などが加わる事になる。
このようなデジタル分業は、ごく自然に、ほとんどの場合対価を伴わないボランタリーで行われたものである。そして、その仕事の中には「もはやプロレベル」とみなされるクオリティのモノが多くあった。「これホントにタダでいいの?」というコメントやタグも見飽きる程あった。冷静に考えると、これはかなり驚くべきことではないだろうか?
昨今ではさらに、コンシューマーとプロの境界が薄くなり「プロシューマ―」という言葉も生まれている。専業のプロでなくても、イラストを描いたり歌詞に曲をつけたりすることで、お小遣いを稼いでいる人も多い。インターネットの発達に伴って、スキル習得のためのコストが低下したことや、情報の非対称性が少なくなってきたことなどが、その理由に挙げられるだろう。
プロシューマ―によるデジタル分業は、今後さらに進んでいくと私は考える。
スマートコントラクトによる収益分配
さて、デジタル分業で作った成果物で消費者からお金を頂く場合、分配はどうすべきだろうか。また、消費者からお金を預かって、それを皆に分配するという、メンドクサイ作業を行うのは誰だろうか?
先ほどの「歌ってみた動画」の例で考えよう。
「この動画は素晴らしい!買います!」という顧客がいた場合、作詞家、作曲家、動画職人、歌い手、ミキサーに、どのように代金を分配すればいいのだろうか? また、誰が顧客のお金を預かって分配するのか?
(念のために言っておくと、無料でハイクオリティの作品があふれているボカロ動画・歌ってみた動画に、わざわざお金を払おうとする物好きは少ない。これはあくまでも例え話である)
ここに強いソリューションが登場する。そう、イーサリアムのスマートコントラクトである。
スマートコントラクトを使えば、あらかじめ分配比率を決めておいて、適正に代金を分配する事が出来る。さらには、消費の形態によって分配を可能になる。
例えば、動画がダウンロードされた時には動画職人に多めに分配を、曲が実演に使われた場合には作詞家と作曲家だけに分配を、という事だってできる。
これから2030年に向けては、デジタル分業・オンデマンド労働といった働き方がますます注目されるだろう。スマートコントラクトによって、分配にかかるコストを下げつつ適正な分配を実現する。
正に、新世代の通貨にふさわしい!
…というのが私がイーサリアムをガチホールドしている理由であるが、いうまでもなく、皮算用あるいは妄想に終わる可能性もある。
もし悲しい結末を迎えたとしても、それはそれ、「夢をありがとう」と笑うだろう。
決して、笑えないレベルの金額を仮想通貨のようなハイリスク商品にぶち込むべきではない。
投資とは、笑ってやるものである。
Easy oar.
※1:ちなみに、私はdポイントと楽天ポイントが大好きである。
※2:発行者の立場で見れば、ブロックチェーンの利用による「価値の民主化」であるけれども、それはある種の浪漫でしかないかもしれない。
※3:これら全てを一人でこなして、かつヒット曲を連発させた天才が「ハチ」さんであり、今は本名:米津玄師でメジャーデビューしている。
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