2050年、生死の選択がかなり自由にできるようになっている。ただしお金次第。

未来予想図

SNS等で、安楽死・尊厳死の議論が発生中

2020年7月23日、難病の女性(51)から依頼を受けて彼女に薬物を投与し、殺害したとして、二人の医者が逮捕されました。

参考:https://www.yomiuri.co.jp/national/20200723-OYT1T50152/

「自分を殺してほしい」と見ず知らずの人に頼むほどの苦痛とはどれほどのものなのか、想像する事しかできませんが、女性の冥福をお祈りいたします。

この事件をきっかけに、私のTwitterのタイムラインにも、安楽死・尊厳死に関わるツイートが流れてきています。「SNSで議論が産まれている」と言っても言い過ぎではないかと思います。

さて、本エントリーの目的は、安楽死・尊厳死の議論にモノ申す事ではありません。

もともと、「2050年頃には生死がある程度コントロールできるようになっていて、その時の死生観はこんな風になっているんじゃないかなあ」という戯言を書こうとしていたのですが、たまたまそのタイミングで安楽死の議論を良く見かけるようになったので、それも材料にして書いたら長文になってしまったという顛末です。

ちなみに、安楽死に関する、現時点での私の考え方は

私が自由意志で楽に死ねる権利は認めてほしい」です。

ちょっと議論を覗いてみましょう

下記の橘玲氏の記事によると、「日本人の7割以上が安楽死の合法化に賛成」との事です。それならなんで法制化が進んでいないかというと…

実は日本でも、元衆議院議員・太田典礼氏を中心に発足した日本安楽死協会が1979年に「末期医療の特別措置法案」を作成し、国会への提出を目指したことがある。だが、この法案は「人権派」や身体障害者団体から「ナチスの優生思想と同じ」と猛烈に批判され、断念せざるを得なくなった。こうして日本の政治で「安楽死」はタブーとなり、団体は「日本尊厳死協会」と改名して「安らかな死」を求めるリビング・ウィルの普及を目指すようになった。

優生思想というのは簡単にいうと「優れた人間だけが生き残り、社会の役に立たないような人間は生きている価値ナシ」という思想で、今回逮捕された医師も優生思想っぽい事を良く口にしていたそうです。

確かに、政府が自由に安楽死させられるようになったらそんな恐れもありますね。

でも「安楽死って本人の意思が大前提なんじゃないの?」って感じる人も多いはず。

安楽死法制度化に反対の意見

私の見る限り、
①日本で安楽死を合法化したら「早く死になよ」って無言の圧力(デスハラ)がかかる
②今は死にたいかもしれないが、もしかしたら死にたくなくなるかもしれない

といった意見が多いでしょうか。

デスハラについては、下記のマンガがとてもわかりやすいです。

デスハラによって、本当はそれほど死にたくないにも関わらず、死を選ばざるを得ないような状況に追い込まれてしまうのではないか、という懸念ですね。

マンガは非常に極端ですが、安楽死を法制度として認めるという事は、「死すべき」という公的なプレッシャーを与えてしまうことになる、という意見は理解できるものであります。

下記はnoteからの引用:

一部の政治家が安楽死や尊厳死の議論を呼びかけていることについて|三春充希(はる) ⭐第50回衆院選情報部
逮捕された医師は元厚労省官僚 「高齢者は社会の負担」優生思想 京都ALS安楽死事件  全身の筋肉が動かなくなっていく神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した京都市中京区の女性に薬物を投与して殺害したwww.47news.jp ALS安楽死、SNS高まる議論 死迫る圧力、優生思想、やまゆり園と同...

第二に、政治家は、安楽死や尊厳死の持つ公的な性格に自覚的であるべきということです。

 安楽死や尊厳死というのは、一見して自己決定権に関する個人の問題であるようです。しかし、それらがもつ公的な性格を見落とすことはできません。死の選択が個人を離れて、生きたいと思う人に、生きることを断念させる圧力が加わる事態を招くおそれがあるからです。

介護に疲れた親族や、医療費が大きな負担になっている親族から、それとなく安楽死を進められる未来があるかもしれません。

親の介護のために離職したり破産したりするケースもある中では、そのような親族の気持ちも分かりますし、超高齢化社会の中で公的な援助にも期待できません。(全ての高齢者のために今よりも手厚い医療支援をしたら、それこそ現役世代の負担が大きくなり過ぎるので現実的とは言えないでしょう)

デスハラに懸念する意見も理解できます。私個人的には、このようなハラスメントに警戒するあまり、尊厳死という個人の決定権を奪わないでほしいと思いますが、上述の通り、安楽死の賛否を論じるのが本稿の目的ではないので、とりあえず置いておきます。

さて思うのですが、このデスハラの問題って、「安楽死の対象になる人が、周りの人にとって金銭的あるいは物理的な負担になる」という事が前提ですね。ってことは、医療費の負担などが全く問題にならない程度に十分なお金を持つ人にとっては、デスハラなんてどこ吹く風。お金持ちは本当の意味で自分の死のタイミングを選べるという事になるのではないでしょうか。

そして、安楽死による議論が遅々として進まない中で、医療技術はどんどん進んでいきます。

確実に進む医療・延命の技術

自然界において人間は放っておけば死ぬわけですが、医療の進歩と共に延命治療ができるようになりました。そしてその延命治療が必ずしも幸福に満ち溢れたものではないため、安楽死論争を産んでいます。

健康であれば長生きしたいと思うのは当然の事であって、永遠の若さを人間に授けるべく、科学と医学はあゆみを止めません。

遺伝子工学、ナノテクノロジー、再生医療、サイバネティック・オーガニズム。これらの分野は日進月歩のため、楽観的な予測や予言には事欠きません。

グーグルの投資部門であるグーグル・ベンチャーズのCEOを務めたビル・マリスのセリフ。
「人は500歳まで生きられるかと問われれば、答えは『イエス』です」
(If you ask me today, is it possible to live to be 500? The answer is yes.)

ここでいう「生きる」は、病院で様々な装置に繋がれた状態ではなくて、健康に自由に動き回れる状態を指します。

著名な発明家であり研究者、同じくグーグルのCTOを務めたレイ・カーツワイルは、”1940年代生まれ(つまりカーツワイル自身も)が人類が最初に不老不死を手にする世代になると考えて”いるそうです。(wikipediaより)今72歳だけど凄いですね。

人間は2200年までに死に打ち勝つと考える専門家もいれば、2100年までにそうなるとする専門家もいる。カーツワイルとデグレイはそれに輪をかけて楽観的で、2050年の時点で健全な肉体と豊富な資金を持っている人なら誰もが、死を10年単位で先延ばしにし、不死を狙って成功する可能性が十分あると主張している。(ユヴァル・ノア・ハラリ著「ホモ・デウス」より)

カーツワイル博士の予言が当たっているならば、この文章を読んでいる方の多くは不死を獲得できるかもしれません。

例えば、調子の悪くなった臓器を人工的なモノに取り替えて、10年程度延命する。その人工臓器の耐用年数が尽きるまでの時間に、あらたな延命技術が開発され、さらに10年寿命を延ばす。あとはその繰り返し… やったね!永遠に生きられるよ!

もしこの予言が外れていたとしても、技術的に人間が「永遠の若さ」に近いものを手にする時代は、いずれ訪れるでしょう。

ただし、わざわざハラリさんが”豊富な資金を持っている人なら”と書いている通り、そのような超技術の恩恵が得られるのは、お金持ちだけという事になるでしょう(いずれその技術がコモディティ化するまでは)

不老の技術は、安楽死論争よりもシビアな断絶を産みかねない

さて、「お金持ちだけが半端ないレベルで長生きできる」となると、「金持ちでも貧乏でもいつかは死ぬよね」といった、ある種の諦観が成り立たなくなるわけで、しかもその「半端ないレベルで長生きできる人々」は、健康かつ資本もあるので、社会的な生産性も維持できちゃうわけです。

これ、いったいどんな社会になるのでしょうね?

みんな長生きしたくて、あるいは身内に長生きしてもらいたくて、今よりも必死に働いたりするのでしょうか?

それとも、持てるものと持たざるものの対立が大きくなって、治安が悪化しちゃったりするでしょうか?「銀河鉄道999」みたいな、機械化人がそうでない人を迫害するような社会も可能性はゼロではないかも。

仮に、「平等」を重視して、金持ちが自費でサイボーグ化する事を法律で禁止するとしたら、その人の生きる権利を侵害する事になるかもしれません。

今の安楽死問題もかなり難しいところですが、さらにシビアな命題を近未来の人々は突きつけられるんじゃないでしょうか。

それでもなお未来においては、特に「豊富な資金を持っている人なら」なおさらの事、「死」だけでなく「生」についての選択肢も広がっている事でしょう。

未来予想図 2050-01
生死の選択がかなり自由にできるようになっている。ただしお金次第。

ちなみに、現代医療が無かったらすでに死んでいるかもしれない私ですが、治る見込みがない状況になったら(安楽死が出来ない場合)延命措置はしてほしくないと思っています。カッコつけて言うと、明日死ぬつもりで生きているので何の悔いもありません。

でも「緩和ケア」は全力でお願いします! マジで!

Easy oar.

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