最近、図書館にハマっている。
本の山に囲まれるとテンションが上がる。
たくさんの本をタダで読めるし、貸し出しの期限があるから「積ん読く」になりにくいのが嬉しい。
そんなわけで、最近読んだ面白かった本の一冊。
生きるって事は、本当にたいへんだ
自然界では、動物は簡単に死ぬ。寿命を全うする個体の方がはるかに少ない。
「なぜ生きるのか」と哲学的に考えたりもする人間を除き、一般的に生き物の生きる目的は「繁殖」のためである。
そのためには、外敵から身を守り、食べ物を確保し、セックスしなければならない。
動物は進化という方法で、生き残り繁殖するための能力を高めて来た。
しかし、捕食者が進化すれば、食べられる側も身を守るための進化を重ねる。
動物たちは、常に競争のただなかにある。
そしてその進化の競争は、人間の感覚からすると「マジかよ!」と思う生態や特技を生み出したりもする。
地球上の生命何十億年という歴史において、進化は問題をたくさん作ってきたが、解決策もいろいろ見つけてきた。せめぎ合いをさんざん繰り返してきたのである。問題や解決策のなかには、実にクリエイティブ、というか荒唐無稽なものも多々ある。この本では、そんな奇抜な事例のなかでも極め付きの数々をご紹介しよう。
象徴的な事に、第一章はセックスの話である
本書は、まずセックスの話から始まる。
生き物の目的は繁殖であり、「食べる事」や「食べられないように身を守る事」は、その派生的な目的である。
失明し息絶えるまで腰を振り続けるアンテキヌスという有袋類のオスなど可愛いもので、チョウチンアンコウのオスはメスの体に溶けていくらしい。
オスがかみつくと、顔が酵素で化学的に分解され始め、やがてメスの体に融合する。メスの循環系から養分の供給を受けて、オスの体はかなり大きくなり、不要となった眼などの器官や骨格は退化していく
私はこの本で、雄アンコウのヒモの鑑のような生態を知ったが、昔「トリビアの泉」でもやってたようで動画があった。百聞は一見に如かず。
ヒラムシのペニスフェンシングも興味深い。
ヒラムシは雌雄同体の扁形動物で、精子と卵を両方持っている。
ヒラムシ同士が出会うと、お互いにとんがった性器を相手の体に刺そうと、フェンシングのような戦いを始める。戦いに負けた方がメスとなり、卵を作り産卵する事になる。
産卵には多くのエネルギーを要するため、お互いなるべくオスでいたいようである。
なお、ヒラムシのこの生態が一部の性癖を持つ人たちを狂気乱舞させたようで、「ヒラムシを擬人化した同人誌」がその界隈でブームになった。なんというか、人間の業の深さを思い知らされる。
アリの受難
アリの個体数は、控えめな見積もりで10京匹とされる。
それだけ多いと、アリを食糧とする生き物も増える。その中でも「飛び切りクリエイティブかつ残忍」と本書で紹介されているのが「アリ断頭バエ」である。
このハエは、悪名高い「ヒアリ」の体内に卵を産み付け、卵から孵ったうじは体内をもぞもぞと頭部へ向かう。
そしてある程度成長すると、ヒアリをコントロールする化学物質を出して、コロニーを離れた落ち葉だまりへと宿主を導く。そして体内から頭を…
なんともホラーであり書くのが怖くなってきたので、詳細は本書にてお願いします。まあ、ヒアリが残酷な殺され方をしても心の痛む人は少ないと思いますが。
また、本書の別の項目では、アリをゾンビのように操って、自らの繁殖に利用するオピオコルディケプスという菌類も紹介されている。
オピオコルディケプス属の菌類の何種かは、アリの脳に侵入すると、宿主をマインドコントロールして樹木の所定の範囲へ誘導し、ゾンビと化したそのアリを葉脈にかみつかせてから息の根を止める。そのうえで頭から柄を伸ばし、下を歩く仲間のアリに胞子を雨あられと振りかける
これもYoutubeに動画があったのでペタリ。おっかないですね~
そういえば、ゾンビ映画「バイオハザード」について語っていた生物学者が、
「人間をゾンビのようにするのは、ウイルスには物理的に無理。可能性があるとすると菌類」
と言っていたのを思い出した。
菌類恐るべし!
似たような本と比べても、中身が濃くて面白い
本書は上述したように、たいへんな思いをして生きているたくさんの生き物を紹介してくれる。
進化には理由がある。これらの生き物が教えてくれる話は、とても示唆に富んでいる。
文体もジョーク交じりでとても面白い。
生き物の端くれたるこの私の存在理由はただ1つ、子をもうけて自分の遺伝子を伝えることなのに、そうする意欲が今のところこれっぽっちもない。そう自覚している事がわが人生最大の皮肉である。
夏休みにおススメの一冊。
なお今月から、ブログの書体を「ですます調」から「である調」にひっそりと変えてみた。
理由は、「その方が自由に書けるような気がした」からである。
何事もフィーリングが大切だと思う。
Easy oar.
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